AI概要
【事案の概要】 原告である通信社(一般社団法人共同通信社)は、被告(首都圏新都市鉄道株式会社)が、中日新聞社および日本経済新聞社の各新聞記事(いずれも原告の配信記事を複製または翻案して作成されたもの)の画像データを社内イントラネットにアップロードし、従業員が閲覧できる状態に置いたことにより、配信記事の文章に係る原告の著作権(公衆送信権等)が侵害されたとして、民法709条に基づく損害賠償を請求した事案である。被告は著作物性の欠如と消滅時効の完成を主な抗弁として争った。 【争点】 - 本件訴えが先行する別件判決の既判力に抵触するか - 本件各新聞記事文章が原告各文章を複製または翻案したものであるか(原告各文章の著作物性を含む) - 被告の故意または過失の有無 - 原告の損害額 - 消滅時効の起算点 【判旨】 裁判所は原告の請求を一部認容し、87万3000円の支払いを命じた。 ①既判力の抵触について:別件訴訟の訴訟物(新聞社の著作権侵害)と本件訴訟物(原告通信社の著作権侵害)は異なるため、既判力の抵触はないと判断した。 ②著作物性・複製・翻案について:原告の配信記事は、逆三角形構成の採用、事項の取捨選択、簡潔な文章表現など記者の個性が表れた著作物と認定。本件新聞記事文章(本件新聞記事文章1-68を除く)はいずれも対応する原告文章の表現上の本質的特徴の同一性を維持しており、複製物または翻案物に当たると判断した。ただし本件新聞記事文章1-68については、表現自体が変更され配列・構成も変更されているとして複製・翻案を否定した。被告が主張する「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)への該当も否定した。 ③過失について:被告は著作権の使用許否について法的調査検討を行っておらず、少なくとも過失が認められると判断した。 ④損害額について:原告の利用料基準(掲載期間に応じ3000円〜1万5000円)を相当と認め、著作権法114条3項に基づく損害額を77万3000円、弁護士費用を10万円、合計87万3000円と認定した。 ⑤消滅時効について:原告が損害発生を現実に認識したのは別件訴訟の訴訟記録を閲覧した令和4年12月13日および令和5年1月20日であり、本件訴訟提起前に消滅時効は完成していないと判断した。