在外被爆者損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】広島市に投下された原子爆弾により被爆した3名の被爆者(いずれも被爆後まもなく朝鮮半島に帰還し韓国で死亡)の相続人である韓国居住の原告ら23名が、国を被告として損害賠償を求めた事案である。厚生省公衆衛生局長が昭和49年に発出した通達(402号通達)は、日本国外へ移住した被爆者には原爆特別措置法が適用されず健康管理手当の受給権は失権となる旨定めていた(本件失権取扱い)。この取扱いにより、本件被爆者は被爆者健康手帳の交付や健康管理手当の受給を妨げられた。本件失権取扱いは平成15年3月に廃止され、最高裁平成19年判決で国家賠償法上の違法性が確認されている。被告は、消滅時効(廃止通知発出の平成15年3月1日から20年)の完成を主張し援用した。 【争点】被告による消滅時効の援用が権利の濫用に該当するか。 【判旨】原告らの請求を全部認容した。本件失権取扱いは法律上の根拠を有せず国家賠償法上違法であり、本件被爆者は各110万円(慰謝料100万円・弁護士費用10万円)の損害賠償請求権を有していたと認定した。消滅時効の援用については、被告が原告らの権利行使を直接妨げた事情は認められないものの、(1)本件失権取扱い自体が日本国外居住者を対象とし権利行使が比較的困難な者に適用されるものであったこと、(2)消滅時効の起算日(平成15年3月)時点では402号通達の発出等が国賠法上違法であるとする判例は確立しておらず、(3)被告が平成17年の高裁判決後も上告受理申立てをして国賠責任を争い続けたことが原告らに損害賠償請求権の存在について疑念を抱かせ権利行使を事実上困難にしたといえるとして、消滅時効の援用は権利の濫用に該当し許されないと判断した。