残存費用等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 LPガス販売事業者である被上告人が、戸建て住宅の購入者である上告人(消費者)に対し、LPガス供給契約に基づく残存費用等の支払を求めた事件である。被上告人は住宅建設業者と提携し、住宅の消費設備(配管・ガス栓等)を無償で設置した上で、住宅購入者とLPガス供給契約を締結していた。契約書には、供給開始から10年経過前に供給を終了させる場合、設置費用21万円から経過月数に応じた額を控除した残額を支払う旨の条項(本件条項)があった。上告人が約2年で他社に切り替えたため、被上告人が本件条項に基づき約17万円の支払を請求した。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、被上告人の請求を棄却した。本件条項は、消費設備の設置対価を定めたものではなく、供給契約の短期解約を防止し長期維持を図るとともに、先行投資された設置費用に関する損失補填も目的とするものであり、実質的に解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めとして機能するから、消費者契約法9条1号の違約金等条項に当たる。そして、LPガス販売事業者は設置費用とガス料金の関係をあえて不明確にし、ある契約者の設置費用を契約者全体から回収する仕組みを構築していたことから、一部の契約者が早期解約しても未回収分の損害が生じたとはいえず、同種契約の解除に伴う平均的な損害は存しない。よって本件条項は全部無効である。 【補足意見】 林道晴裁判官は、本判決がいわゆる「無償配管」の商慣行について消費者契約法上の判断を示した意義を指摘した上で、令和7年4月施行の三部料金制(基本料金・従量料金・消費設備費用の区分請求義務)の下、設置費用を明確に区別して請求する場合には本判決の射程は当然には及ばないと述べ、ガス料金の透明化を促した。
裁判要旨
1 液化石油ガス販売事業者との間で締結された戸建て住宅への液化石油ガスの供給等に関する契約に係る契約書中の、消費者が、上記契約を供給開始日から10年経過前に終了させる場合、上記事業者によって上記住宅に設置された消費設備に係る配管の設置費用等に関し、所定の算定式によって得られた金額を上記事業者に支払う旨を定めた条項は、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号にいう「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に当たる。 ⑴ 上記事業者は、上記消費者に販売される前の上記住宅に上記配管等を設置しながら、上記住宅の販売会社に対してその設置費用等を請求しておらず、上記消費者は、上記住宅の購入に当たって上記販売会社より上記事業者から液化石油ガスの供給を受ける必要がある旨説明を受けていた。 ⑵ 上記事業者は、上記消費者と上記契約を締結するに当たり、上記事業者から液化石油ガスの供給を受けている間は上記消費者に上記設置費用等を請求しないこととするとともに、上記条項により、上記消費者が供給開始日から10年経過前に上記契約を終了させる場合に上記設置費用等に関して支払うべき金額を経過期間に応じて逓減させることとしていた。 ⑶ 上記契約上、上記算定式により得られる金額は供給開始日から10年が経過するまでの間において1か月ごとに一定額ずつ減少するとされているものの、10年経過後には上記消費者が上記事業者に支払うべきガス料金が減額されるという定めはなく、上記設置費用等とガス料金との関係は明確にされていなかった。 2 液化石油ガス販売事業者との間で締結された戸建て住宅への液化石油ガスの供給等に関する契約に係る契約書中の、消費者が、上記契約を供給開始日から10年経過前に終了させる場合、上記事業者によって上記住宅に設置された消費設備に係る配管の設置費用等に関し、所定の算定式によって得られた金額を上記事業者に支払う旨を定めた条項は、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、その全部について消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号により無効となる。 ⑴ 上記契約上、上記算定式により得られる金額は供給開始日から10年が経過するまでの間において1か月ごとに一定額ずつ減少するとされているものの、10年経過後には上記消費者が上記事業者に支払うべきガス料金が減額されるという定めはなく、上記設置費用等とガス料金との関係は明確にされていなかった。 ⑵ 上記契約と同種の液化石油ガスの供給契約において液化石油ガスの価格に法令上の規制がなく、液化石油ガス販売事業者は自由にガス料金を設定することができる。 ⑶ 上記設置費用等のほかに、上記契約と同種の消費者契約の解除に伴い、上記事業者に生ずべき平均的な損害に当たり得るものは見当たらない。 (1、2につき補足意見がある。)
参照法条
(1、2につき)消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)420条1項、民法420条3項