特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 「蚊類防除用エアゾール、及び蚊類防除方法」に関する特許(特許第7026270号)を有する原告(大日本除虫菊)が、被告(アース製薬)に対し、被告の「おすだけノーマット」シリーズ9製品の製造・譲渡等が原告の特許権を侵害するとして、特許法100条に基づく差止め・廃棄及び民法709条に基づく損害賠償金1億円の支払を求めた事案である。本件特許は、害虫防除成分を含むエアゾール原液を噴射した際、その少なくとも一部が壁面等の露出部に「付着性粒子」として付着し、露出部に止まる蚊類を長時間にわたり防除するという技術的思想に係るものである。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件の充足性)、(2)本件特許に無効理由(明確性要件違反、サポート要件違反、実施可能要件違反、新規性・進歩性の欠如)が存するかである。 【判旨】 裁判所は、明確性要件違反(争点2-1)について判断し、請求を棄却した。本件発明の「付着性粒子」とは、処理空間内の露出部に付着し、時間が経過しても付着した状態を維持して露出部に止まる蚊を防除する粒子と解されるが、「時間が経過しても付着した状態を維持」といえるための付着の程度について、本件明細書には付着量を確認する試験方法・測定方法等の記載がなく、優先日当時の技術常識としても認められないとした。さらに、明細書の実施例における気中残存率試験及びKT50値による防除効果試験からは、防除効果が露出部に付着した粒子によるものか、付着後に揮散した害虫防除成分によるものかが不明であり、付着の程度を示すものとはいえないと判断した。以上から、構成要件1F(「付着性粒子として噴射され」)は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるとして、原告の請求をいずれも棄却した。