AI概要
【事案の概要】 東証一部上場の建築資材・住宅事業会社の実質的経営者(被告人a)と代表取締役社長(被告人b)が、グループ会社とグループ外の会社(f社)との間で行われた複数の不動産取引に基づく売上等を計上し、営業利益等を過大に記載した有価証券報告書を提出したとして、金融商品取引法違反(虚偽記載有価証券報告書の提出)に問われた事案である。差戻し前の第一審は取引を架空と認定して有罪としたが、控訴審は取引の実在性を肯定した上で、会計基準上の争点について審理を尽くすため差し戻した。差戻し後の第一審(当審)では、訴因が「架空売上の計上」から「会計的な準則に反する売上の計上」に変更された。 【争点】 本件各取引に基づく売上等の計上が、当時の会計基準(企業会計原則の実現主義)に照らし、「重要な事項につき虚偽の記載」に該当するか。具体的には、実現主義の要件である①財貨の移転及び②対価の成立が認められるかが争われた。 【判旨】 裁判所は、検察官の主張する会計基準の解釈(経済的実質を重視し、グループ内融資を原資とする取引では財貨の移転も対価の成立も認められないとする見解)は、それ自体合理的かつ説得的であると認めつつも、当時、収益認識に関する包括的な会計基準や本件類似の事案における確立した解釈指針は存在しなかったと指摘した。弁護側の会計専門家の見解(法形式に基づき所有権移転や代金決済の完了をもって収益認識を肯定する見解)も正当性・合理性に疑義はないとし、検察官の解釈が唯一のものとまでは認められないと判断した。被告会社の会計処理が会計基準に照らして許されないものであったとまでは認められず、「重要な事項につき虚偽の記載をした」との認定には合理的な疑いが残るとして、被告人両名に無罪を言い渡した。