AI概要
【事案の概要】 いわゆる袴田事件の再審無罪判決(令和6年9月26日・静岡地裁)の宣告に際し、静岡地方裁判所は判決要旨を作成し、司法記者クラブ所属の報道機関に対しては約2時間の判決言渡しと並行して5回に分けて順次交付した。一方、弁護人らに対しては判決宣告終了後に全文を一括交付した。弁護人であった原告らは、報道機関と同様の5分割交付を受けられなかったことは憲法14条1項の平等原則に違反し、憲法37条1項・3項に由来する弁護権を侵害する不合理な差別的取扱いであるとして、国に対し国家賠償法1条1項に基づき各100万円の慰謝料を請求した。 【争点】 判決要旨を報道機関には5分割交付し弁護人には判決宣告終了後に一括交付したことが、平等原則に違反し弁護権を侵害する国家賠償法上違法な行為に当たるか。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず判決要旨の交付は報道機関向け・訴訟関係人向けいずれも司法行政上の便宜供与であり、その主体は訴訟法上の裁判所ではなく国法上の機関としての裁判所であると認定した。次に、複雑・長大な判決の正確な理解という観点からは、弁護権が報道機関の知る権利に劣後してよい理由はなく、判決要旨が作成された場合に弁護人にも交付することは弁護権の保障から保護に値し得るとした。しかし、本件で問題となるのは交付方法の相違(判決宣告中の5分割か終了後の一括か)に限られるところ、出席した弁護人については口頭の判決言渡しを傾聴することが一義的役割であり途中の交付はかえって集中を阻害しかねないこと、欠席した弁護人については出席する権利を放棄した以上公判廷外で即時的に判決内容を知ることまでは法的保護に値しないこと、判決は宣告期日終了まで終局的とならないこと等を考慮すると、弁護人が報道機関より実質的に劣位に置かれたとはいえず、交付方法の相違は差別的取扱いに当たらないと判断した。