AI概要
【事案の概要】 原告(沢井製薬)が、被告(東レ)の保有する「止痒剤」に関する特許(特許第3531170号)の存続期間延長登録について、延長登録無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、その取消しを求めた事案である。本件特許は、オピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤に関するもので、被告は医薬品「レミッチOD錠2.5μg」(有効成分:ナルフラフィン塩酸塩)の製造販売承認を理由に4年11月26日の存続期間延長登録を受けていた。原告は、ナルフラフィン塩酸塩は特許発明の技術的範囲に属さないこと(無効理由1)、及び延長期間が実施不能期間を超えていること(無効理由3)を主張した。 【争点】 (1) 無効理由1(特許法125条の2第1項1号該当性):ナルフラフィン塩酸塩を有効成分とする本件医薬品が、請求項1の「一般式(I)で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤」の技術的範囲に属するか。原告は、請求項1にはフリー体のみが記載され酸付加塩は補正により意識的に除外されたと主張した。(2) 無効理由3(同項3号該当性):延長期間の算定において、OD錠の剤形追加承認に先行する軟カプセル剤の臨床試験期間を算入できるか。原告は、OD錠に係る生物学的同等性試験の開始日を起算点とすべきと主張した。 【判旨】 知財高裁は原告の請求を棄却した。争点(1)について、「有効成分」の用語は出願日前後を通じて体内で薬理作用を発揮する化学物質の意味で用いられており、本件明細書でもκ受容体作動性化合物とその酸付加塩は厳密に区別されていないと認定した。酸付加塩は薬効自体を変化させるものではなく溶解性・安定性向上のための形態にすぎないから、当業者が酸付加塩の形態を技術的範囲外と解釈するとは考えられないとした。出願経過参酌についても、拒絶理由通知で請求項3は拒絶対象とされておらず、補正における「酸付加塩」文言の欠落は意識的除外とは認められないと判断した。争点(2)について、剤形追加に係るOD錠の承認審査では既承認の軟カプセル剤に係る臨床試験成績が不可欠の資料として提出・審査されており、これらの臨床試験は本件処分を受けるためにも必要であったと評価できるとした。延長期間4年11月26日は各試験期間の合計を超えないとして、審決の判断に誤りはないと結論づけた。