AI概要
【事案の概要】 原告は、氏名不詳者らによる架空の投資詐欺により合計1億2400万円の被害を受け、資金移転先口座の名義人である訴外Aら8名に対して不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起し、訴外Aに対して約1億0375万円の支払を命じる判決を得て確定した。一方、被告(有限会社スタッシュキャッシュから商号変更)は、訴外Aに対する1000万円の貸金債権があるとして福岡簡裁に支払督促を申し立て、仮執行宣言付支払督促(本件債務名義)を取得し、訴外A名義の犯罪利用預金口座(残高約1035万円)に対する債権差押命令を得た。原告は、訴外Aの債権者として債権者代位権に基づき、本件債務名義に表示された請求権が不存在であるなどと主張して、請求異議の訴えを提起した。 【争点】 (1) 本件請求権(被告の訴外Aに対する1000万円の貸金債権)の存否。(2) 本件債務名義が適法に成立したか。(3) 請求異議訴訟における立証責任の所在。被告は、ベトナム人Bから横領に係る損害賠償金の代わりに訴外Aに対する貸金債権を譲り受けたと主張し、原告は、被告が凍結口座の残高を違法に得ようと企て架空の債権で支払督促を騙取したと主張した。 【判旨】 請求認容。裁判所は、まず立証責任について、支払督促は請求の当否に関する実体的判断を経ずに発付されるもので既判力を生じないため、請求異議訴訟では債権者(被告)が請求権の発生原因等の立証責任を負うと判示した。そのうえで、被告が主張するBから訴外Aへの1000万円の貸付け及びBから被告への債権譲渡の事実を直接裏付ける証拠がないこと、被告の主張が支払督促申立時と本訴で一貫性を欠くこと(申立時は被告自身が貸主と主張していた)、訴外Aは令和5年1月以前に出国後入国しておらず送達先の福岡市の住所に住民記録も存在しないことから督促異議の不申立ては請求権の裏付けとならないことを認定し、本件請求権の存在を否定して強制執行の不許を命じた。