債務不存在確認請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 弁護士である原告は、日本司法支援センター(被告)との間で、被援助者Aを当事者とする代理援助契約(保佐開始の審判申立て)を締結し、被告から立替金10万8000円の交付を受けた。その後、Aが医師から後見相当との診断を受けたことから、原告はAのために後見開始の審判申立てに変更したところ、被告は成年後見の本人申立ての代理援助はできないとして援助終結の方針を示した。被告熊本地方事務所長(本件所長)は、援助要件を満たさないとして立替金全額の返還を求める決定(本件原決定)をし、原告がこれに不服申立てをしたところ、本件所長は本件原決定を破棄した上で、援助の終結決定をするとともに、原告が返還すべき立替金を当初立替金の80%である8万6400円とする変更決定を行った。原告は、この変更決定に基づく立替金返還債務が存在しないことの確認を求めて提訴した。 【争点】 ・本件終結決定が業務方法書56条1項2号(「援助を継続することが著しく困難であるとき」)の要件を満たすか否か ・本件終結決定および本件変更決定が消費者契約法8条の3に違反して無効となるか否か ・本件変更決定が立替基準に反し違法か否か ・本件変更決定に理由付記の不備(業務方法書69条の7第1項違反)があるか否か 【判旨】 裁判所は、原告の請求を認容し、本件返還債務の不存在を確認した。 本件契約は消費者契約に該当するとした上で、本件所長は被援助者が医師等の判断により成年後見相当であると判明した際に一律に「援助を継続することが著しく困難であるとき」に該当すると判断しており、個別にAの契約適合性を検討したとはいえないと認定した。 裁判所は、援助の終結決定は実質的には遡及効のない契約解除と同様の効果を有するところ、後見開始の審判等を受けたことを理由に一律に援助を終結することを許容すると、後見開始の審判等を受けることによってかえって消費者に不利益を生じさせる事態を防止するという消費者契約法8条の3の趣旨に反すると判断した。特に、本件のように援助の目的が後見開始の審判等を受けることにある場合、判断能力の劣る被援助者の保護を理由に成年後見制度の利用を妨げるという不合理な結果が生じることも指摘した。また、成年後見開始申立ての本人申立てに係る代理援助の必要性は、市町村長申立て制度の存在によっても低減しないと述べた。 以上から、本件終結決定は消費者契約法8条の3に違反して無効であり、これを前提とする本件変更決定も無効となるため、原告の立替金8万6400円の返還債務は存在しないと結論づけた。