差止請求権不存在確認請求事件
判決データ
- 事件番号
- 令和7(ワ)70141
- 事件名
- 差止請求権不存在確認請求事件
- 裁判所
- 東京地方裁判所
- 裁判年月日
- 2026年3月12日
- 裁判官
- 鮫島康男、髙見秀明、永島憲太郎
AI概要
【事案の概要】 原告(バイオ科学株式会社)は、魚類のα溶血性レンサ球菌症(Ⅱ型)向けの不活化ワクチン「マリンジェンナー Ⅱ型レンサ」(菌株:ラクトコッカス・フォルモセンシスBY2株)を製造・販売している。被告(共立製薬株式会社)は、特許第6355512号(血清型が非KG-型かつ非KG+型のラクトコッカス・ガルビエの不活化ワクチン製剤等に関する特許)に基づき、原告製品が同特許権を侵害するとして警告書を送付した。これを受けて原告が、被告は差止請求権を有しないことの確認を求めて提訴した事案である。 【争点】 - 争点1(充足論):原告製品(ラクトコッカス・フォルモセンシス使用)が「血清型が非KG-型かつ非KG+型のラクトコッカス・ガルビエ」という構成要件を充足するか - 争点2:甲18発明(大分県農林水産研究指導センターが保有する121941株)を主引例とする進歩性欠如の有無 - 争点3:甲20発明を主引例とする進歩性欠如の有無 - 争点4〜7:未完成発明、サポート要件違反、実施可能要件違反、明確性要件違反の有無 【判旨】 裁判所は、原告の請求を認容した。 まず充足論(争点1)について、特許出願日後に学名が変更された場合は当該変更に関する技術常識を参酌すべきとした上で、「ラクトコッカス・ガルビエ121941株」は2021年以降「ラクトコッカス・フォルモセンシスBY2株」に学名変更されたにすぎず、当業者は両者が同一菌株であることを十分理解できるとして、原告製品は本件発明の構成要件を充足すると判断した。 次に進歩性(争点2)について、本件優先日前に大分県農林水産研究指導センターで分離・保管されていた121941株は、当業者に非KG-型かつ非KG+型であると認識されており公知であったと認定。菌株を不活化してワクチン化することは当業者の技術常識であって容易想到であるとし、本件発明1、2、4及び5はいずれも進歩性を欠き無効理由を有すると判断した。 以上により原告製品の製造等について被告の差止請求権が存在しないことを確認した。 サポート要件(争点5)については傍論として判断し、本件構成要件の射程には「ラクトコッカス・ガルビエ」のⅢ型(抗KG-・抗KG+いずれにも凝集しない菌株)も文言上含まれるが、本件明細書にはⅢ型に関する開示が一切なく、Ⅱ型ワクチンがⅢ型には効果を奏しないことからすると、クレームの一部はサポート要件に違反する旨を示唆した。