AI概要
【事案の概要】 外国映画「ゾンビ ディレクターズカット版」の日本語字幕翻訳を制作した原告(字幕翻訳業者)が、スカパー、ひかりTVなどの複数のプラットフォームにおいて、翻訳者として自らの氏名が表示されないまま当該字幕付き映画が公衆送信されたとして、各放送事業者・番組供給事業者・映画DVD販売元である被告ら6社に対し、著作権(公衆送信権)侵害および著作者人格権(氏名表示権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。 【争点】 ・「オールライツ・クリア」の合意により、公衆送信(放送・配信)に対する許諾があったか(公衆送信権侵害の成否) ・同合意に氏名表示権の不行使まで含まれていたか(氏名表示権侵害の成否) ・著作権法19条2項・3項(氏名表示不要の例外)の適用の有無 ・各被告の過失の有無(とりわけ放送事業者・番組供給事業者における注意義務) ・消滅時効の成否 ・損害額および過失相殺の要否 【判旨】 裁判所は、公衆送信権については、原告が字幕制作の依頼を受けた際に「オールライツ・クリア」(DVD販売・TV放送を含む全用途での利用許諾)の条件で合意していたと認定し、公衆送信に対する許諾があったとして、被告らの公衆送信権侵害の主張を退けた。 一方、氏名表示権については、「オールライツ・クリア」の合意内容に氏名表示権の不行使は含まれていなかったと認定し、氏名表示権侵害を肯定した。また著作権法19条2項・3項の適用も否定した。 過失の有無については、映画DVD販売元である被告フィールドワークスは、本件字幕の制作を原告に依頼した者として権利処理を行う立場にあり、放送・配信前に氏名表示の要否を確認すべき注意義務を負っていたのに怠ったとして過失を認定した。他方、番組供給事業者(被告AXN・被告ジャパネット)および放送事業者(被告SPE・被告SPJ・被告アイキャスト)については、契約上の表明保証を信頼することにやむを得ない事情があったとして過失を否定した。 その結果、被告フィールドワークスのみに氏名表示権侵害に基づく損害賠償責任を認め、30万円および20万円の各支払を命じた。その余の被告に対する請求はいずれも棄却された。