特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「紙の綴じ込み用金型セット」に関する特許第5080691号の特許権者である控訴人X(原告A)およびその専用実施権者である控訴人株式会社シャリティー(原告会社)が、被控訴人コクヨ株式会社(被告)に対し、被告製品が本件各発明の技術的範囲に属するとして、特許法100条に基づく差止め・廃棄および損害賠償6000万円を求めた事案である。原審(大阪地裁)は、被告製品が本件発明1・3の技術的範囲に属するものの、PaperWelder Inc.製品(PW製品)を公然実施品とする新規性欠如の無効理由が存在するとして、原告らの請求をいずれも棄却した。原告らはこれを不服として控訴し、当審において廃棄請求を拡張するとともに、訂正審判の請求(本件訂正)に基づく訂正の再抗弁を追加主張した。 【争点】 ・本件訂正(特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審判の請求)の適法性(特許法126条5項・7項適合性) - 新規事項の追加の有無 - 明確性要件(「曲面形状の端部」「山頂部の長さが略同じ長さ」等の用語の明確性) - サポート要件の充足性 - 本件各訂正発明とPW製品との新規性の有無 ・被告製品の訂正後各発明の技術的範囲への属否 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告らの控訴および当審における拡張請求をいずれも棄却した。 裁判所は、訂正の再抗弁について以下のとおり判断した。訂正発明1は、「曲面形状の端部(7a、7b)」の位置に基づいて一方・他方の歯部の位置関係を画定する構成(構成要件C3)を備えるが、①「端」という用語は「先端(境界点)」とも「へり部分(領域)」とも解釈でき一義的ではない、②本件明細書にも「曲面形状の端部」の位置を明確に示す記載・図面がない、③出願時に当該用語の特定を可能とする技術常識の存在も認められない、として特許法36条6項2号の明確性要件を満たさないと判断した。 訂正発明3についても、「山頂部の長さが略同じ長さ」(構成要件F)および「一度も重なり合うことがない」(構成要件H)を特定する前提となる「曲面形状の端部」の意味が不明確であることは訂正発明1と同様であり、「山頂部の長さが略同じ長さ」との用語の意味も不明確と判断した。 以上より、本件各訂正発明に係る特許請求の範囲の記載はいずれも明確性要件に適合せず、本件訂正は特許法126条7項の規定に適合しないとして、訂正の再抗弁には理由がないと結論づけた。その余の争点(新規事項の追加、サポート要件、新規性欠如の解消、技術的範囲への属否)については判断するまでもなく、原判決は相当であるとして本件各控訴を棄却した。