業務上過失致死傷
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、栃木県内のスキー場で実施された平成28年度春山安全登山講習会(本件講習会)において、平成29年3月27日午前8時30分頃、第2ゲレンデ西方斜面北西側の急斜面(上部斜面)で発生した雪崩に関する業務上過失致死傷事件の控訴審である。雪崩により参加生徒ら8名が死亡し、5名が傷害を負った。被告人3名は、栃木県高体連登山専門部の会長(被告人A)、副会長兼主任講師(被告人B)、専門委員で2班主講師(被告人C)として、本件講習会の計画・実施等に関与していた高校教諭である。1審判決は被告人3名全員の過失を認め、いずれも禁錮2年の実刑を言い渡した。 【争点】 - 訴訟手続の法令違反の有無(証拠採否・訴訟指揮の適否) - 本件訓練開始時の新雪の深さ(30cm以上か否か) - 訓練範囲について安全な区域への限定・周知がなされていたか - 被告人Bが上部斜面での登山行動を継続させた事実の有無 - 被告人Cが下山指示をせずトラバースを指示した事実の有無 - 被告人3名の共同過失・各個別過失の成否 - 量刑が重すぎるか否か 【判旨(量刑)】 東京高等裁判所は、訴訟手続の法令違反・事実誤認・法令適用の誤りに関する控訴趣意はいずれも理由がないと判断した。 過失の成否については、被告人3名は本件訓練開始前の時点で、上部斜面において雪崩が発生するおそれを予見でき、安全区域を明確に限定して周知徹底すべき共同の注意義務があったのにこれを怠った共同過失を認定した。また、被告人Bが上部斜面への立入りを許可して登山行動を継続させた個別過失、被告人Cが直ちに下山を指示せずトラバースを指示し退避を怠った個別過失もそれぞれ認定した。 量刑については、1審判決が被告人3名の刑事責任の軽重に格段の違いはないとした点について誤りがあると判断した。被告人Bは、積雪期を含む登山経験が最も豊富で主任講師かつ1班主講師として中心的立場にあり、危険を感じながらも登山続行を許可した結果、1班生徒等に多大な死傷者が生じており、その責任が最も重い。これに対し、被告人A及び被告人Cは訓練実施中に直接移動場所を指示すべき立場になく、また被告人Cは本件講習会全体について主講師以上の役職がなかった点等を考慮すると、実刑を選択すべき領域には及ばないとした。 その結果、被告人Bに関する控訴は棄却(1審の禁錮2年実刑を維持)し、被告人A及び被告人Cについては原判決を破棄し、いずれも禁錮2年・執行猶予5年に変更した。