AI概要
【事案の概要】 被告人は、株式会社A銀行の支店長代理等の職にあった者であり、令和5年3月から令和6年10月までの間に、前後9回にわたり、同銀行の2つの支店において、予備鍵を使用するなどして各貸金庫内から、利用者が所有する現金合計約6145万円、金のインゴット合計29個(時価合計約3億3330万円相当)及び旅行券50枚(額面合計25万円)を窃取した窃盗事件である。1審で懲役9年の判決を受け、被告人側が控訴した。 【争点】 ・起訴されていない余罪(同種窃盗行為等)を実質上処罰する趣旨で考慮した訴訟手続の法令違反があるか ・1審判決の量刑(懲役9年)が重すぎて不当か - 銀行のセキュリティの欠陥を利用したにすぎず、「セキュリティを無力化し、犯行発覚を免れながら」との評価は不合理か - 銀行員に対する倫理的非難には限界があるか - 被害回復状況に関する事実誤認があるか - 被告人の反省態度・更生意欲・真相解明への協力を過少評価していないか 【判旨(量刑)】 控訴棄却。1審の懲役9年の量刑を維持した。 訴訟手続の法令違反の主張について、1審検察官は余罪に触れた部分は犯行の経緯及び常習性に関する犯情・情状を基礎付ける事実として主張したものであり、余罪処罰を求める趣旨ではない旨釈明していること、1審判決も起訴されていない余罪に関する過度に詳細な証拠を職権で排除していること、1審判決の説示部分も犯行態様・動機・経緯の認定評価の一環であることから、余罪を実質上処罰する趣旨で考慮したとはいえないとした。 量刑不当の主張について、被害額が3億9000万円超と巨額であること、被害者らに何ら落ち度がないこと、銀行に信頼され責任ある立場を与えられた被告人が予備鍵や種々の情報を悪用するという限られた者にしかできない犯行手口でセキュリティを無力化し、犯行発覚を免れながら常習的に犯行を繰り返した悪質な犯行であることなどを踏まえ、1審判決の量刑判断に不合理な誤りはないと判断した。弁護人が主張するセキュリティの欠陥論や倫理的非難の限界論についても、被害者から見れば被告人も銀行を構成する責任ある立場の一員であることなどを踏まえ、採用できないとした。金のインゴットの回収に関する事実誤認の主張や、反省態度等の過少評価の主張もいずれも退けた。控訴審での反省姿勢の深化等の事情を考慮しても量刑変更には至らないとし、未決勾留日数100日を算入した。