損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 令和2年8月28日、当時少年であった加害少年(平成17年生)が、福岡市内の商業施設内トイレにおいて、面識のない被害女性(当時21歳)を包丁で多数回突き刺して殺害した事件について、被害女性の親族である控訴人らが、加害少年の母親であり当時の単独親権者である被控訴人に対し、監督義務違反による損害賠償を求めた事案。加害少年は粗暴性・衝動性が顕著で、医療機関や各施設で治療・矯正教育を継続して受けていたが改善せず、少年審判を経て少年院に収容されていた。被控訴人は仮退院時の引受けを拒否し、加害少年は令和2年8月26日に仮退院して更生保護施設に入所したが、翌27日に同施設を抜け出して福岡市内に移動し、翌28日に本件犯行に至った。原審は加害少年に対する請求を認容(控訴人Aに5188万0640円、控訴人Bに220万円)したが、被控訴人に対する請求は棄却したため、控訴人らが控訴した。 【争点】 被控訴人(親権者)の不法行為の成否、特に民法709条に基づく監督義務違反(予見可能性、結果回避可能性及び結果回避義務違反、相当因果関係)の有無。 【判旨】 未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者に監督義務違反があり、それと未成年者の不法行為による損害との間に相当因果関係があるときは、監督義務者は民法709条に基づき損害賠償責任を負う(最判昭和49年3月22日民集28巻2号347頁参照)。本件では、被控訴人は加害少年の顕著な粗暴性・衝動性を認識し、引受け拒否が加害少年の精神状態を不安定にして暴力を誘発する懸念も抱いていたことから、仮退院前後において加害少年が他者に重大な危害を加えるおそれを具体的に予見し、少なくとも予見可能性があったと認められる。予見可能性は結果回避義務を基礎付ける程度のもので足り、現に発生した凶悪な行為までを具体的に予見することは必要ない。被控訴人は親権者として関係機関と連携し加害少年を引き受けて保護・監督すべきであり、引受けが困難な事情があっても、面会・対話・支援の継続や関係機関との連携などなし得る行動を取らなければならなかったが、引受け拒否後一切の働きかけを怠った。被控訴人の監督義務違反と本件不法行為との間には相当因果関係が認められ、両者は民法719条の共同不法行為の関係に立つ。よって原判決中被控訴人に関する部分を変更し、被控訴人に対し加害少年と連帯して控訴人Aに5188万0640円、控訴人Bに220万円及び各遅延損害金の支払を命じた。