AI概要
【事案の概要】 被告人は、和歌山市内の社会福祉法人が運営する障害者支援施設の生活支援員として勤務していた者である。令和6年8月2日から同月31日までの間、意思疎通が困難な施設入居者5名に対し、拳で腹部を殴る、胸倉をつかんで床に引き倒した上首を絞める、車椅子から両足を引っ張って引きずり下ろす、身体をつかんでベッド上に投げ付けるなどの暴行を計5回にわたり加えた。 【争点】 ・判示第3(Eの両足を引っ張り車椅子から引きずり下ろす暴行)の成否 ・判示第4(Fの身体をつかんでベッド上に投げ付ける暴行)の成否 被告人は、Eについては乱暴にはしていない、Fについては投げ付けたことはなく普通にベッドに移乗させたにすぎないと供述し、弁護人もこれらの点を争った。 【判旨(量刑)】 裁判所は、暴行を目撃した元同僚の生活支援員Hの供述について、間近で見た者による詳細かつ具体的なものであり、見えた事実と見えなかった事実を区別して語り、視認条件も良好で虚偽供述の動機もなく、十分信用できると評価した。他方、被告人の弁解については、被介助者を床に引きずり下ろす必要がなく、Fを立たせられたのであればベッド上に座らせるのが適切であって、身体がベッド上ではねるような方法をとる必要がないことからすれば信用できないとし、判示第3・第4の暴行罪の成立を認めた。 量刑については、被害を訴えることが困難な弱者に対し、その尊厳を軽視して一方的な暴行を加えたものであり、傷害結果こそ発生しなかったものの、首を絞めたり車椅子から引きずり下ろしたりするなど重篤な被害が生じかねない危険な行為に及んでおり、態様は悪質であると指摘した。被告人は先輩職員の行動に影響され、安易に悪しき風習に流されて職責に反する行為を繰り返したもので、厳しい非難は避けられず、弁護人の求める罰金刑を選択できる事案ではないとした。他方、被告人が概ね外形的事実を認め反省していること、30万円の贖罪寄付をしたこと、父親が監督を誓約していること、前科がなく再就職し定職を有することなどの有利な事情を考慮し、懲役1年6月、4年間執行猶予を言い渡した。