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2026-04-02

田中一隆裁判官高松地方裁判所

受刑者の選挙権制限は「違憲」— 高松地裁、公選法規定を否定する史上2例目の判断

ニュース

仮想通貨詐欺で懲役7年の実刑判決を受け、2025年7月に加古川刑務所から仮釈放された八木橋健太郎氏(40歳)が、高松市に転入後、選挙人名簿への登録を求めたところ高松市選挙管理委員会に棄却されたため、その取消しを求めた訴訟で、高松地裁の田中一隆裁判長は2026年3月31日、公職選挙法11条1項2号(拘禁刑以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者は選挙権を有しない)の規定は憲法15条等に違反し違憲であるとして、棄却決定を取り消す判決を言い渡した。受刑者の選挙権制限に対する違憲判断は2013年の大阪高裁に続き史上2例目。同種訴訟は最高裁大法廷でも審理が予定されており、統一的な憲法判断が注目される。

出典: 弁護士ドットコムニュース2026年3月31日

プロフィール

生年月日1967年2月27日(59歳)
出身大学
修習期49期
定年退官2032年2月27日
現職高松地方裁判所 民事部部総括判事

経歴

田中一隆裁判官は49期(1997年任官)で、福岡地裁で任官後、名古屋家裁岡崎支部、広島地裁、神戸地裁姫路支部と各地で経験を積んだ。東京地裁民事第36部を経て、高松高裁第2民事部で控訴審を3年間担当。千葉地裁の後、松山地家裁西条支部では支部長として裁判所運営を担った。東京高裁第17民事部での3年間を経て、2023年4月に高松地裁民事部の部総括判事に着任した。最高裁調査官や事務総局といった司法行政の中枢経歴は持たないが、高裁2庁と各地の地裁・支部で幅広い民事事件を担当してきた実務家型の裁判長である。

1997年4月福岡地方裁判所判事補(任官)
1999年4月名古屋家庭裁判所判事補(岡崎支部)
2002年4月広島地方裁判所判事補
2005年4月神戸地方裁判所判事補(姫路支部)
2007年4月神戸地方裁判所判事(姫路支部・判事昇格)
2008年4月東京地方裁判所判事(民事第36部)
2011年4月高松高等裁判所判事(第2民事部)
2014年4月千葉地方裁判所判事(民事第1部)
2017年4月松山地家裁西条支部長
2020年4月東京高等裁判所判事(第17民事部)
2023年4月高松地方裁判所 民事部部総括判事(裁判長)★本件を担当

解説

公職選挙法11条1項2号は、「拘禁刑以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者」の選挙権を剥奪している。この規定は明治以来の法制度を引き継いだものであり、受刑者は「公民権停止」の状態に置かれる。仮釈放中の者も刑の執行中であるため、社会内で生活していても選挙権がない状態が続く。

原告の八木橋健太郎氏は、約2億円相当のビットコインを詐取した詐欺罪で2019年に懲役7年の実刑判決が確定。長野刑務所、加古川刑務所で服役中、2020年夏に急性骨髄性白血病と診断された。独学で法律を学び、服役中に計8件の訴訟を本人訴訟で提起してきた。2025年7月末に加古川刑務所から仮釈放され、同年8月に高松市に転入届を提出。2025年12月1日の選挙人名簿登録日に名簿に登録されなかったため異議を申し立てたが棄却され、同年12月11日に高松地裁に棄却決定の取消しを求めて提訴した。2026年2月19日に結審し、3月31日に判決が言い渡された。なお、2026年3月に刑期満了を迎えている。

田中一隆裁判長は、2005年の最高裁大法廷判決(在外邦人選挙権訴訟)が示した「選挙権の制限には、やむを得ないと認められる事由がなければならない」という判断枠組みを本件に適用した。その上で、(1) 受刑者の大多数は選挙と無関係な犯罪で収監されており選挙権制限の合理的根拠がない、(2) 選挙権の制限が将来の犯罪抑止に影響するとはいえない、(3) 刑事施設内での選挙権行使に事務的支障はない、(4) 受刑者は選挙に必要な情報の入手が可能である、と判断。市選管の「選挙の正統性や公正性が害される」との反論については「抽象的な印象論の域を超えるものではない」として退け、選挙権を制限するやむを得ない事由は認められないと結論づけた。

受刑者の選挙権をめぐる違憲判断は、2013年9月の大阪高裁判決(小島浩裁判長)に続き史上2例目である。大阪高裁は「選挙権の行使とは無関係な犯罪が大多数であり、一律に公民権を剥奪する合理的根拠はない」と判断していた。一方、広島高裁(2017年)や東京高裁(2024年3月)は「受刑者は法秩序を害した者」として合憲と判断しており、下級審の判断は分かれている。

注目すべきは、最高裁の動きである。八木橋氏が服役中に提起した別件(国政選挙投票権確認訴訟)について、最高裁第1小法廷は2026年1月21日、大法廷に回付することを決定した。大法廷回付は、最高裁が新たな憲法判断を示す可能性がある場合に行われるもので、公選法11条1項2号の合憲性について、最高裁として初めての統一的な判断が示される見通しである。本件高松地裁判決は、その大法廷審理に先立つ下級審の判断として、重要な参考材料となる。

AIによる考察

本判決の法的意義を検討する。

第一に、判断枠組みの適用が注目される。田中裁判長は2005年最高裁大法廷判決(在外邦人選挙権訴訟)の「やむを得ない事由」基準を受刑者の選挙権制限に適用した。在外邦人訴訟は「国内居住者と同様の投票環境を海外に整備することの困難さ」という物理的制約が争点であったのに対し、本件は「犯罪者の選挙権を剥奪することの正当性」という質的に異なる問題である。この枠組みの適用自体が、選挙権を「やむを得ない事由がなければ制限できない権利」として強く保護する立場を表明したものといえる。

第二に、公選法11条1項2号の制限が「一律すぎる」ことへの批判が判決の核にある。同条項は犯罪の種類を問わず、禁錮以上の刑を受けた者すべてから選挙権を剥奪する。選挙犯罪を犯した者の選挙権を制限することには一定の合理性があるが(公選法252条で別途規定)、窃盗や詐欺などの一般犯罪で服役する者の選挙権まで一律に剥奪する根拠は薄い。田中裁判長が「受刑者の大多数は選挙と無関係な犯罪で収監されている」と指摘したのはこの点である。

第三に、国際的な潮流との関係がある。欧州人権裁判所のハースト対英国判決(2005年)は、受刑者の選挙権を一律に剥奪する英国法を欧州人権条約違反と判断した。カナダ最高裁のソーヴェ判決(2002年)も同様の判断を示している。G7諸国では、カナダ・フランス・ドイツが原則として受刑者にも選挙権を認めており、全面的に制限しているのは日本・イギリス・アメリカの一部の州である。本判決は、受刑者の選挙権を認める国際的動向とも軌を一にする。

第四に、原告の特殊性にも留意が必要である。八木橋氏は仮釈放中であり、社会内で生活しているにもかかわらず選挙権がないという状態にあった。服役中の者と異なり、既に社会復帰の過程にある者の選挙権を否定することの不合理さは、より明白である。判決は仮釈放中の者に限定した判断ではなく受刑者全体について違憲と判断しているが、仮釈放中であるという事情が、裁判所の判断を後押しした面はあるだろう。

第五に、最高裁大法廷での審理が控えていることが、本判決の射程を左右する。大法廷が違憲判断を示せば、公選法の改正が必要となる。合憲と判断した場合も、判決理由の中で「一律制限は不合理だが立法裁量の範囲内」とするのか、「制限自体に合理性がある」とするのかで、今後の立法政策は大きく異なる。田中裁判長の本判決は、大法廷がいずれの結論を取るにせよ、参照すべき論点を網羅的に提示した意義がある。

出典・参考

※ この記事はAIが公開情報をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な情報は出典元をご確認ください。