保有個人情報不開示決定処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 上告人は、刑務所に収容中に同室者からいじめを受けたとする亡母(死亡済み)に関する調査記録の情報について、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(旧法)12条1項に基づき、処分行政庁(近畿矯正管区長)に開示請求を行った。これに対し処分行政庁は、当該情報が生存する個人に関する情報ではなく、また上告人を本人とする保有個人情報に当たらないとして不開示決定を行った。上告人はその取消しを求めて提訴した。 【争点】 - 亡母に関する調査記録の情報が、上告人(遺族)を本人とする「保有個人情報」(法2条2項・5項)に該当するか - 当該情報が法45条1項所定の「刑の執行に係る保有個人情報」として開示請求の対象外となるか 【判旨】 最高裁判所は上告を棄却し、不開示決定を適法と判断した。まず、原審が法45条1項(刑の執行に係る保有個人情報の適用除外)に当たるとした判断には解釈適用の誤りがあるとした。亡母は生存する個人ではなく同項の対象とならず、上告人は刑の執行を受けた者でもないためである。しかし、法12条1項に基づく開示請求が認められるには、対象情報が開示請求者を本人とする保有個人情報であることが必要であるところ、上告人が主張する損害賠償請求権はその発生可能性を主張するにとどまり、上告人が現にこれを有しているとはいえない。したがって、亡母に関する調査記録は上告人に関する情報とはいえず、また上告人を識別できる情報でもないため、本件情報は上告人を本人とする保有個人情報に当たらないと結論付けた。原審の結論は是認できるとして上告を棄却した。 【補足意見】 裁判官林道晴・石兼公博は補足意見を付した。死者に関する情報が生存する遺族を本人とする保有個人情報に当たるか否かは、法の規定に従い個々の事実関係に応じて判断すべきであり、開示請求者が主張する損害賠償請求権との密接関連性を基準とする下級審裁判例の手法は相当でないとした。また、未支給保険給付の請求権取得や相続税更正処分を受けた遺族に関する情報公開審査会の答申例など、本判決が対象としない事案が別途存在することを留保し、さらに医療・介護分野における診療情報提供等、個人情報保護法制の枠外の問題については本判決は論じないことを付言した。