損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、高校野球部に所属していた亡Xが自死したことを受けて、その相続人である原告ら(実父、実母、養父)が、亡Xの同級生で同じ野球部に所属していた被告ら6名に対し、被告らが亡Xに対してズボンを脱がせたり、携帯電話を隠したり、「サル」と呼んでからかう、LINEグループから退会させるなどの一連のいじめ行為を行ったことが不法行為に当たると主張し、謝罪文の交付による謝罪と、慰謝料等各330万円の連帯支払を求めた事案である。 【争点】 ・被告らの各行為が不法行為を構成するか(一連のいじめと評価できるか) ・損害の有無及び額 ・過失相殺の可否(亡Xの家庭環境を考慮すべきか) ・謝罪請求権の有無 【判旨】 裁判所は、いじめ防止対策推進法上の「いじめ」に該当する行為が直ちに民法上の不法行為となるわけではなく、当事者の関係性、行為の内容・性質、被害の程度、動機・経緯等を総合的に勘案して、行為の悪質性が相当程度高く社会通念上許容される範囲を超える場合に不法行為に該当すると判断した。 その上で、亡Xと被告らは良好な友人関係を築いており、いじめる側といじめられる側という関係が確立していたとはいえず、被告らの行為を一連一体として評価するのは相当でないとして、個別に検討した。 ズボンを脱がせる行為については、複数人で身体を押さえつけるなどして抵抗できない状態にした上で脱がせた態様が悪質であり、スライディングパンツを履いていたとしても、屈辱的で大きな羞恥心を抱かせる行為であるとして、被告B、C、D、E、Fの共同不法行為を認めた(被告Dも、くすぐって抵抗を困難にさせていたことから共同不法行為責任を負う)。他方、被告Aは関与の証拠がなく、不法行為は成立しないとした。 携帯電話を隠す行為は相互に行われており、実害も大きくなく、からかい行為(「サル」との呼称、「森に帰れ」「しんどけ」「あほ」等のメッセージ、フットガードへの落書き等)も良好な友人関係の中で互いを低俗な呼称で呼び合っていた延長と評価でき、LINEグループから退会させた行為も約5時間後に再招待していることなどから、いずれも社会通念上許容される範囲を超えるとはいえず、不法行為に該当しないとした。 損害については、亡Xが受けた精神的苦痛に対する慰謝料を90万円と認定し、原告ら3名が各30万円を相続したとして、弁護士費用各3万円と併せ、各33万円の支払を命じた。過失相殺については、家庭環境が精神的苦痛の発生・拡大に寄与したとはいえないとして否定した。謝罪請求については、名誉毀損は認められず、民法723条に基づく請求権もその他の法的根拠も認められないとして棄却した。