勾留の裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
判決データ
AI概要
【事件の概要】 申立人は、Aに対し自己名義の普通預金口座に係るキャッシュカード1枚を譲り渡したとの被疑事実により令和8年2月6日から勾留(先行勾留)されていた。検察官は同月25日、譲渡日を変更した公訴事実で起訴するとともに、裁判官に勾留状発付の職権発動を求めたが、裁判官は理由を示さず職権を発動しなかった。しかし検察官は、先行勾留の被疑事実と公訴事実の同一性が認められたと誤解し、釈放指揮を行わないまま身柄拘束を継続した。翌26日、検察官は裁判官の判断が公訴事実に係る勾留をしない趣旨であったことを知り、同日夜に申立人を釈放した上で、改めて別の裁判官が勾留状を発付し執行された。申立人はこの勾留の裁判に対し準抗告を申し立てたが棄却され、さらに最高裁に特別抗告した。 【争点】 ・検察官が勾留状不発付の通知を受けながら釈放指揮を行わず身柄拘束を継続したことの違法性 ・上記違法が、その後に別の裁判官が発付した勾留状(本件勾留)の効力に影響を及ぼすか 【判旨】 最高裁は、本件抗告を棄却した。まず、特別抗告の趣意は憲法違反をいう点を含め実質は単なる法令違反の主張であり、刑訴法433条の抗告理由に当たらないとした。その上で、職権により本件勾留の適法性を判断した。 検察官が、先行勾留に係る勾留状に「釈放」と記載・押印していながら、本件公訴事実に係る勾留状が発せられなかった旨の通知を受けた後も、その理由を確認せず釈放指揮を行わずに身柄拘束を継続したことは違法であると認定した。 しかし、職権発動をしなかった裁判官がその理由を示していなかったため、先行勾留の被疑事実と公訴事実に同一性があると検察官が理解したことが直ちに誤りとはいい難いこと、また検察官が勾留に関する諸規定を潜脱しようとしたものとは認められないことから、当該違法は裁判官がした本件勾留の効力に影響を及ぼすものとはいえないと判断し、本件勾留を是認した原決定は正当であるとした。裁判官全員一致の意見による。